無添加の石けんが洗濯には適していない理由は、助剤(ビルダー)が入っていないから。
助剤が入っていないと、石けんの使用量が無駄に増え、石けんカスが残留して衣類の黄ばみや洗濯槽のカビで悩まされることになります。
では、助剤(ビルダー)とは何か
助剤とは、一言でいうと洗浄力増強剤のこと。
衣類につく汚れは、泥やほこり、汗、皮脂などさまざまな汚れが複雑に絡みあっています。
また、水や汚れに含まれる微量のカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの金属イオン(ミネラルともいう)も洗濯には厄介な存在です。
洗剤は主に界面活性剤の働きにより汚れを取り除くものですが、洗濯用の場合、多種類の汚れを効果的に除去するため、主剤である界面活性剤の働きを向上させるための助剤(ビルダー)が配合されています。
界面活性剤とは、二つの物質の界面(表面)に働いて、境界面の性質を変える、本来なら混ざり合わない油と水を混ぜ合わせ、汚れを落とす働きのあるものを界面活性剤といいます。石けんも、この界面活性剤の仲間です。
助剤は、水中や汚れに存在するカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどを封鎖する水軟化作用、衣類等に付着する汚れを落としやすいアルカリ性に保つアルカリ緩衝作用、落ちた汚れを洗浄液中に分散し再付着を防ぐ分散作用などの働きによって洗浄力を高め、さらに界面活性剤の配合割合を少なくさせることができます。
かって、合成洗剤は石けんの洗浄力には歯が立ちませんでした。
そんな合成洗剤の助っ人(ビルダー)として登場したのがトリポリリン酸塩でした。
トリポリリン酸塩はカルシウムイオンやマグネシウムイオンと反応して洗浄作用を妨害しない水溶性の物質に変えて洗剤の効果を上げるなど、助剤として抜群の効力を発揮し、合成洗剤の洗浄力は格段に良くなりました。
トリポリリン酸塩は1960年頃から大量に使われ、1963年には、電気洗濯機の普及も相まって合成洗剤の生産量が石けんの生産量を上回りました。
ところが、リンは肥料の三要素「窒素・リン酸・カリ」の一つであり、水質の富栄養化をもたらすため、1979年に環境汚染物質として「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」が制定されました。
合成洗剤メーカーはトリポリリン酸塩の配合をやめ、洗濯用合成洗剤は「無リン」になりました。
トリポリリン酸塩が使えなくなった合成洗剤メーカーはトリポリ燐酸塩に取り替わる助剤として水軟化剤(アルミノけい酸塩)、アルカリ剤(炭酸塩、ケイ酸塩)、分散剤(ポリエチレングリコールなど)が配合され、それ以外にも酵素、漂白剤、蛍光増白剤が配合されています。
「無リン」を強調する商品が多いのですが、洗濯用合成洗剤には助剤は欠かせないものであって、トリポリリン酸塩に代わる上記のような助剤や添加剤が石けんに比べ非常に多く配合されています。
石けんの助剤としては、炭酸塩やケイ酸塩が配合されていますが、それらは日本の水道水はカルシウム石けんやマグネシウム石けんが洗濯に悪さをするほどではない軟水なので、主に洗濯液の酸性化を防ぎ洗浄に適したアルカリ性を保つ役割を果たしています。
また、皮脂汚れに含まれている脂肪酸を中和して石けんに変えるなどによって、石けんの使用量をおさえ、環境負荷の低減に役立っています。
炭酸塩、ケイ酸塩は無機物で生分解不要のため、環境負荷がほとんどありません。
洗濯用石けんの助剤は合成洗剤と違って、非常にシンプルです。
洗濯用石けんから助剤を除外した無添加の石けんでの洗濯を勧めるということは、兵士に武器を持たずに戦場へ行け、と言っているようなものです。
●洗濯用の粉石けんの表示の例(助剤入り)↓
●洗濯用の粉石けんの表示の例(助剤なし)↓
●洗濯用の液体石けんの表示の例(助剤入り)↓
●洗濯用の液体石けんの表示の例(助剤なし)↓
●洗濯用合成洗剤の表示の例↓
→ 「炭酸ソーダ(炭酸塩)」の商品ページはこちら。
石鹸洗濯の助剤に。これ単独で「アルカリ洗濯」に。アルカリ度が高いので、家事用手袋を使うのがオススメです。