洗濯用の石けんに重曹を混ぜたら、石けんの洗浄力を落とすだけ。
理由は、重曹の水溶液のpHは8.2(2%、20℃)、洗濯用石けんのpHは10前後だから、石けんのアルカリを弱めてしまう。まして重曹は溶けにくい。
アルカリを弱くするということは、洗浄力を落とすということ。
通常の洗濯において汚れが最もよく落ちるのは、pH9.0からpH10.5。
そもそも洗う目的は汚れを取ることだから、わざわざ洗う力を落とすとはおかしな話。
ただしウールやシルクなどのデリケートな生地を洗うときに洗濯用の石けんに重曹を混ぜるのはアリ。(注1)
デリケートな生地を洗うときに、無添加の石けんに重曹を混ぜるのもアリ。
この場合重曹はアルカリ緩衝剤として働く。
ただし液体石けんに重曹を混ぜると固まってしまうので、要注意。
10年も前のことですが、某石けんメーカーの部長さんから、
「このたび重曹入りの粉石けんを作りましたので、ぜひ取り扱ってください」との話がありました。
「おしゃれ着洗い用ですか」と聞いたら、「いえ、普通の洗濯用です」とのことでした。
丁重にお断りしました。
重曹は水を柔らかくできない
「重曹には水軟化(水中のカルシウムやマグネシウムを取り込んで、水の硬度を下げ、洗浄力の低下を防ぐ)作用があって石けんの洗浄力を高める」、とまことしやかにいう人が結構多い。
しかし、洗浄に関する専門書(注2)で調べれば、重曹が水の硬度を下げる力は最低ランクであることが分かるはず。
また、「重曹には水を柔らかくする性質があるため、衣類をふんわりと仕上げる柔軟剤としての効果もあります。」なんて大真面目に書いてあるサイトがありますが、「水を柔らかく」の意味が分かっているのだろうか。噴飯ものだ。
科学的根拠のない、いい加減な情報を拡散するのはやめてほしい。
(注1)
奥山春彦・皆川基編著「洗剤・洗浄の事典」朝倉書店
「(炭酸塩の)pHが高いため、弱い繊維を損傷したり、手を荒らす原因にもなる。そのため、家庭用の場合には、重炭酸ナトリウムを用いて、セスキ炭酸ナトリウムの形にし、pHを調整することも実際に行われている。」
(注2)
「洗剤・洗浄の事典」、辻薦著「工業洗浄の技術」地人書館、阿部芳郎著「洗剤通論」近代編集社刊など
メモ:2019年10月
・「石けん」を「洗濯用石けんに」に修正
・「無添加石けんに重曹はアルカリ緩衝剤として働く」を加筆
→ 石けん百貨オリジナル「洗濯効き目プラス 柿渋&有機酸(濃縮タイプ)」の商品ページはこちら。
洗濯に、柿渋と有機酸のパワーをプラス。嫌な臭いを消し、微生物類を抑制する洗濯仕上げ剤です。ちゃんと洗ったはずなのに臭いが残るとき、部屋干し続きですっきりしないときなどに。