合成洗剤で手や肌が荒れるのは、界面活性剤の働きによるものです。
界面活性剤は身近な洗剤や化粧品、医薬品、食品、塗料、土木材料などいろんなところで利用されていますが、その働きは乳化や界面、表面などについて理解するとよくわかります。
お互いに溶解しない「油」と「水」を強く混ぜ合わせると白く濁って乳のように見えるので、この現象を「乳化」といいます。
しかし、しばらくすればまた水と油に分離してしまいます。
なぜ水と油は混ざり合わないのだろう。
水と油の間の境界面(界面)注1には、表面張力(界面張力)注2が働いていて、表面積を最も小さい球状にして安定しようとします。
水と油は、界面張力が強いため水は水同士、油は油同士まとまって、界面の面積を最小にしようとするため混ざり合わないのです。
お風呂の鏡が曇るのは小さな水玉が鏡表面に無数にくっつくことが原因ですが、水の表面張力のなせる業なのです。
汗や泥、ほこりなど水溶性の汚れは水で洗い流すことができますが、皮脂などの油性の汚れは水に溶けないため、水だけでは落とすことができません。
水と油の界面張力を下げる(乳化効果の大きい)物質を界面活性剤といいます。
乳化剤は界面活性剤と同義語で、一般的に食品の場合は「乳化剤」、洗剤や化粧品の場合は「界面活性剤」と表示されます。
石けんや合成洗剤は、界面活性作用によって油を水に溶かして(油と水の界面張力を失わせて)洗い流すことができるのです。
乳化について最もわかりやすいのが、ドレッシングとマヨネーズの例です。
ドレッシングの材料は油と酢で、強く振ると一時的に乳化しますが、しばらくするとまた油と酢に分離してしまいます。
マヨネーズの材料は油と酢と卵ですが、酢と油に卵が加わると、卵黄に含まれるレシチンが乳化剤として働いて乳化がキープされるのです。
乳化した食品には、マーガリン、バター、マヨネーズ、アイスクリームなど、たくさんあります。
界面活性剤は数千種類あり、そのうち安全性が優先され「食品衛生法」によって指定されたものが乳化剤として使用されています。
化粧品にも界面活性剤が使われていますが、界面活性剤であることが表示されていないことがほとんどですから注意が必要です。
洗剤による手や肌の荒れは、乾燥と外部刺激から肌を守るために働いている皮膚の表面が、界面活性剤によって変化(バリア機能の低下もしくは破壊)するためです。
特に合成洗剤はうすめても界面活性作用を失わず、また手肌に残りやすいので、肌荒れの原因になりやすいのです。
石けんはうすまればすぐに界面活性作用を失います。
また弱アルカリ性であるため、弱酸性である皮膚によって中和され、石けんカスになって界面活性作用を失い簡単に洗い流されるので、肌を傷つけることがほとんどないのです。
最近は肌に優しい洗剤が開発されている、とよく言われますが、実際には原材料が安価で肌への刺激が必ずしも優しくない界面活性剤が使われた洗剤が主流です。
肌の弱い方は、界面活性剤の種類や性質をよく吟味する必要があります。
と言っても、これが結構難しいことではありますが…
次回は、界面活性剤の環境への影響を考察します。
(注1)「界面」とは気体及び液体、固体が互いに接する境界面で、空気中での液体や固体の外側の部分は、一般的に「表面」という。
(注2)表面張力と界面張力の意味は同じで、一般的に、気体と液体の界面の間における力を特に表面張力といい、それ以外の間に働く力を界面張力という。
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